本サイトでは, 中学レベルの電気回路の内容から始め, 電流のフェーザ表示, 複素インピーダンス, 複素電力, 2端子対回路網, 分布乗数回路, 変成器, グラフ理論, 相反定理, テレゲンの定理などについて解説します.

フェーザ表示

交流電流・電圧の振幅と位相を複素数で表示することを「フェーザ表示」と呼びます.

フェーザ表示とフェーザでない実数表示は別物なので, 一つの計算の中で混ぜて使うことはできません. フェーザで計算を始めた場合には最後までフェーザで計算する必要があります.

フェーザはいつでもどこでも使える表示方法ではなく, 例えば, のこぎり波や三角波など, 正弦波以外の波形には使えません.

どういう理屈でフェーザ表示というものが出てくるのか, 以下の記事で解説しています.

正弦波のフェーザ表示(複素数表示)

複素インピーダンス

フェーザ表示した電圧をフェーザ表示した電流で割ると, 複素インピーダンスが得られます. 複素インピーダンスは, 直流回路における「抵抗」に対応する物理量です.

フェーザ表示の活用:複素インピーダンス

複素インピーダンスは周波数を変数とする複素数であり, 実部と虚部(または大きさと位相)を有するため, 普通のグラフ上に表示することができません.

複素インピーダンスは特殊な表示方法がなされるのですが, その代表的な 2つが, Cole-Cole plot と Bode plot です.

複素インピーダンスの表示:Cole-Cole plot と Bode plot

複素インピーダンスに関連する物理量として, 複素誘電率・アドミタンス・モジュラスという物理量がありますが, 実は全て複素インピーダンスと同じものを表しており, 複素インピーダンスと相互に変換することができます.

ではなぜ, 複素インピーダンスと全く同じ物理量が使われるのか, について, 以下の記事で解説しました.

アドミタンスはなぜ必要?複素誘電率, モジュラスとの関係

複素電力

電圧を電流で割ればインピーダンスが得られ, 電圧と電流を掛けると電力が得られます. 中学で習ったこの関係は, フェーザでも成り立ちますが, 複素電力の定義には複素共役が登場します.

これはなぜなのか, について以下の記事で詳しく考えました.

有効電力と無効電力

複素電力に複素共役が使われるのはなぜか?

2端子対回路網

直列接続や並列接続などの操作は回路解析の基礎ですが, この「接続」という考え方は回路要素の集合(回路網)でも実行できます. ここで必要になるのが, 2端子対回路や回路網行列という考え方です.

2端子対回路概説

分布定数回路

電流の波形に比べて回路要素が大きい, または同程度の大きさのとき, これまでの回路の知識だけでは対象となる回路要素を議論することができません.

例えば, 海底ケーブルにおいては入力端と出力端で電流の瞬時値が変わってくるはずです.

こうした回路要素を扱うためには, あらたに「分布定数回路」という概念が必要となってきます. 分布定数回路では, 回路要素(R や C や L)が要素内部に分散して存在する場合を考えます.

分布定数回路と電信方程式

電信方程式:線路内の反射波について

分布定数回路の解析には基本的に微分方程式が用いられます. しかし, 2端子対回路の考え方を応用することで, 微分方程式を用いずに分布定数回路を取り扱うことが可能です.

分布定数回路におけるF行列の導出

分布定数回路におけるS行列とは?S⇔Z行列相互変換とS行列の活用

n端子対回路網の行列表現とZ行列・F行列・S行列の相互変換

変成器

変成器は私たちの身近にも存在する重要な回路要素でありながら, あまり取り扱われません. 以下の記事では変成器の基本的な性質を解説しています.

変成器の仕組みと行列表現:理想変成器が生み出す論理の歪み

グラフ理論

キルヒホッフの法則や閉路電流法は大変便利で実用的な回路解析手法です. しかしながら, その証明は意外と大変であるため, 高校までは「なぜか成り立つ方法」として取り扱われていました.

ここではその全貌を理解することを目指しますが, そのためにはグラフ理論なる新たな分野に足を踏み入れねばなりません. 本サイトでは, テレゲンの定理を導出ために必要となるグラフ理論の基礎的な内容のみを解説します.

交流回路のためのグラフ理論基礎

キルヒホッフの法則と基本カットセット行列

閉路電流法と補木枝電流

テレゲンの定理

テレゲンの定理は「各枝における電力の総和は常に零」であることを示し, 電力保存則とも呼ばれます. 非常に応用範囲が広く, 多端子対回路における相反定理を導出するためにも用いられる定理です.

閉路方程式の対称性と相反定理

テレゲンの定理と多端子対回路における相反定理