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4端子回路網概説

投稿日:2020年10月30日 更新日:

4端子回路網が持つ威力の最たるものは「回路の中身を一切覗くことなく, 回路の全ての情報を抽出できること」です.

加えて, 4端子回路網から導かれる回路網行列という概念は「回路の接続」を可能にし, 計算を便利にしてくれることでしょう.

今回は「4端子行列の求め方」, 「n端子対回路」, 「F, Z, Y行列の相互変換」, 「回路の接続」など, 4端子回路網に関する内容を網羅的に概説します.

必要なものは「中学レベルの数学」と「行列」, 「短絡・開放」などの回路の知識です.

4端子回路網とは

世の中には「端子が4つ」と捉えることで考えやすくなる回路が多く存在します.

これら回路の中身を完全に無視し, ブラックボックスとして外側から回路を眺めるのが4端子回路網という考え方です.

図1 (左)同軸ケーブルの等価回路 (右)4端子回路網

4端子回路網を描くときは一般に, 左側に入力端子対, 右側に出力端子対を取ります. 回路の構成要素が線形素子(電流が電圧に比例している回路部品. キャパシタやコイルや純抵抗)だけならば入力端子対と出力端子対は入れ替えても問題ありません. 見る方向が異なるだけです.

非線形素子(ダイオードやトランジスタ)が含まれるときには入力と出力を勝手に入れ替えることはできません.

線形回路であれば端子対はどちらが入力でどちらが出力でも問題ありませんが, 端子対として選ぶ端子はどれでも良いわけではありません.

端子対を構成する2つの端子について, 片方の端子から電流が出ていくのなら, もう片方の端子には同じだけの電流が入り込まなければなりません.

図2 端子に流れ込む電流 = 対となる端子から出ていく電流

4端子対回路網は2つの端子対で構成される回路網であるため, 「二端子対(2ポート)回路網」と呼ぶこともあります.

同様に「一端子対回路網」や「三端子対回路網」, 果ては「n端子対回路網」という考え方も存在し, ちゃんと体系化されていますが, 今回は軽く触れるに留めます.

4端子行列(F行列)

4端子回路網という考え方は, 中学1年生で習う「関数」と同じように考えるとイメージしやすいかと.

関数(函数)とは, とある入力をに依存した出力をする箱です. 例えば, 1次関数は $x$ という入力に対して $y=ax + b$ という出力を返します.

図3 (左)1次関数 (右)4端子回路網

4端子回路には2つの入力と, 2つの出力があります. 入力電圧 $v_{in}$ , 入力電流 $i_{in}$ , 出力電圧 $v_{out}$ , 出力電流 $i_{out}$ (電流も電圧もフェーザ表示)です.

回路が現実に存在し, 入力電圧と入力電流が決まっているなら, 出力電圧と出力電流は当然1つの値に決まります. 逆もまた然り. 出力の2つが決まっていれば, 入力の2つも決まるはずです.

よって, 回路が線形素子のみで構成されているとき, 入力と出力の関係は複素数 $A$ , $B$ , $C$ , $D$ を使って以下のように表せます.

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array} \, v_{in} = A \, v_{out} + B \, i_{out} \; \cdots \; (1) \\ \, i_{in} = C \, v_{out} + D \, i_{out} \; \cdots \; (2) \end{array} \right. \end{eqnarray}

連立方程式が出来ました. 係数 $A$ , $B$ , $C$ , $D$ 及び, $v_{in}$ , $i_{in}$ , $v_{out}$ , $i_{out}$ の8つの内どれか6つが分かれば, 残りの2つを自動的に求められる連立方程式です.

この連立方程式は行列の形で表すこともできます.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, i_{in} \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{rr} A & B \\ C & D \end{array} \right] \, \left[ \begin{array} \, v_{out} \\ \, i_{out} \end{array} \right] \end{eqnarray}

上記の手順で導かれ, 入力と出力の関係を表す, 回路に固有の(入出力電圧, 電流の大きさや周波数に依存しない)行列 $F = \begin{eqnarray} \left[ \begin{array}{rr} A & B \\ C & D \end{array} \right] \end{eqnarray} $ を「4端子行列」, または「F行列」と呼びます. 本稿では以後 F行列と呼ぶことにします.

一般に $F$ を使いますが, この $F$ は Four-terminal の $F$ だと言う人もいれば, Fondamental(基本的な)の $F$ だと言う人もいます.

F行列を求める

F行列は入出力の電圧や電流の大きさ, 及び周波数に依存しないので, F行列さえ分かれば入力と出力の関係を数式に表すことができて大変便利です.

そして, 入出力に依存しないという性質を用いることで F行列は簡単に求められます. ここで使うのは数学的操作ではなく, 電気回路特有の変数消去操作 = 「開放と短絡」です.

開放と短絡について曖昧な方は以下をご参照ください.

F行列の求め方

ここからは F行列の求め方を解説していきます.

まず, 出力端子対を開放(則ち, 出力端子に無限大の大きさの抵抗を挿入)して入力端子対に一定の交流電圧を印加し, 出力端子対に掛かる電圧を測定します.

出力端子対が開放されているので, 出力端子対に電流は流れず($i_{out} = 0$), 式(1) はこうなります.

$$ \, v_{in} = A \, v_{out} \; \cdots \; (1)^{\prime} $$

式(1)$^{\prime}$ において入力電圧を出力電圧で割れば $A$ を求めることが可能です.

次は $B$ を求めるため, 出力端子対を短絡(出力端子を導線で接続)して, 入力端子対に掛かる電圧と出力端子対に流れる電流を測定します.

出力端子対が短絡されているので, 出力端子対には電位差が存在せず($v_{out} = 0$), 式(1) はこう.

$$ \, v_{in} = B \, i_{out} \; \cdots \; (1)^{\prime \prime} $$

式(1)$^{\prime \prime}$ の入力電圧を出力電流で割れば $B$ が求められます.

$A$ は電圧を電圧で割って求められる無次元の物理量ですが, $B$ は電圧を電流で割って求めるので単位は $[\mathrm{ \Omega }]$ です. $A$ , $B$ は同じ行列の中にある要素ですが, 単位がそれぞれ異なることにご注意下さい.

上記のような導出方法に由来して, $A$ , $B$ にはそれぞれ 「開放電圧比」, 「短絡伝達インピーダンス」という名前が付けられていますが, 名前は別に何でも構いませんし重要でもありません.

残りの $C$ , $D$ についても出力端子対を開放したり短絡したりしつつ, 電圧や電流を測定して 式(2) を使うことで求められます. $C$ は開放伝達アドミタンス(単位 $[\mathrm{ S }]$), $D$ は短絡電流比(無次元)という名前(単位)です.

求めるときに入力端子の方を開放したり短絡したりできるのならばそうやって求めても問題ありません. 入力端子対と出力端子対は本質的に等価であり, 交換可能です. ただし, 線形素子で構成される回路に限ります.

補足:大事なこと(F行列の威力)

F行列を求めるプロセスで大事なのは「回路の中身に一切触れていない」ということです.

回路の一部(もしくは全部)をブラックボックス化する4端子回路網という考え方を用いれば, 回路の中身を考える必要は全くなく, 中身を考えずとも回路の全てを把握できます.

この考え方を応用したのが, 様々な「電気測定」です.

ミクロな世界で電子がどういうパスを通って, どこに行く, 何が起こる, それらに対して我々は想像しかできません. しかし試料内部がどのような構造であっても, コイルとキャパシタと抵抗で構成される一意な回路へと置き換えることができます.

コイル, キャパシタ, 抵抗に対応する物理現象を考察することで間接的に物質の内部構造を知ることができるのです.

とはいえ, 実際には試料内部で非線形な応答が起こることは珍しくありませんので, 電気測定で明らかにできることには限界があります.

様々な回路網行列

4端子回路網を記述する行列は1種類ではありません. 最も良く使われるものはF行列ですが, 他にも状況に依って便利な行列が後2種類あります.

なぜ色々な行列があるのか, という話は「接続」で詳しく説明するとして, 一先ず残り2つの行列を紹介します.

インピーダンス行列(Z行列)

左辺に入力電圧と出力電圧, 右辺に入力電流と出力電流を持ってくると, 以下のような行列の式ができます.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, v_{out} \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{rr} Z_{11} & Z_{12} \\ Z_{21} & Z_{22} \end{array} \right] \, \left[ \begin{array} \, i_{in} \\ \, i_{out} \end{array} \right] \end{eqnarray}

この $Z = \left[ \begin{array}{rr} Z_{11} & Z_{12} \\ Z_{21} & Z_{22} \end{array} \right]$ をインピーダンス行列(Z行列)と呼びます. Z行列の要素はすべて単位が $[\mathrm{ \Omega }]$ です.

ここで注意なのですが, F行列のときの 出力電流 $i_{out}$ と Z行列のときの 出力電流 $i_{out}$ は向きが逆になっています.

図4 F行列の電流の向き Z行列の電流の向き

アドミタンス行列(Y行列)

同じように, 左辺に入力電流と出力電流, 右辺に入力電圧と出力電圧を持ってくると, 行列要素の単位がすべて $[S]$ になるアドミタンス行列(Y行列)についての式を立てることができます.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, i_{in} \\ \, i_{out} \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{rr} Y_{11} & Y_{12} \\ Y_{21} & Y_{22} \end{array} \right] \, \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, v_{out} \end{array} \right] \end{eqnarray}

アドミタンス行列の式中の電流の向きはインピーダンス行列のときと同じです。

各行列の関係と相互変換

名前からも分かる通り, Y行列とは Z行列の逆行列のことで, Z行列と Y行列は相互に変換可能です.

$$ Y= Z^{-1} = \frac{1}{|Z|} \cdot \left[ \begin{array}{rr} Z_{22} & – Z_{12} \\ – Z_{21} & Z_{11} \end{array} \right] $$

Z行列と F行列も書き方が違うだけ. 本質的に表しているものは同じなので相互に変換できます.

Z行列を用いた電流電圧の関係式と, F行列を用いた式では, 出力電流 $i_{out}$ の向きが異なることに注意して, F行列を使ったときの電流の向きを正とすると, 以下の式が立てられます.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, v_{out} \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{rr} Z_{11} & Z_{12} \\ Z_{21} & Z_{22} \end{array} \right] \, \left[ \begin{array} \, i_{in} \\ \, – i_{out} \end{array} \right] \end{eqnarray}

連立方程式の形にすれば,

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array} \, v_{in} = Z_{11} i_{in} – Z_{12} i_{out} \; \cdots \; (3) \\ \, v_{out} = Z_{21} i_{in} – Z_{22} i_{out} \; \cdots \; (4) \end{array} \right. \end{eqnarray}

(1) – (4)式を使ってF行列の要素を求めると,

\begin{eqnarray} \, A &=& \left( \frac{ v_{in} }{ v_{out} } \right) _{i_{out = 0} } = \frac{ Z_{11} }{ Z_{21} } \\ \, B &=& \left( \frac{ v_{in} }{ i_{out} } \right) _{v_{out = 0} } = \frac{ Z_{11} Z_{22} – Z_{12} Z_{21} }{ Z_{21} } = \frac{ |Z| }{ Z_{21} } \\ \, C &=& \left( \frac{ i_{in} }{ v_{out} } \right) _{i_{out = 0} } = \frac{ 1 }{ Z_{21} } \\ \, D &=& \left( \frac{ i_{in} }{ i_{out} } \right) _{v_{out = 0} } = \frac{ Z_{22} }{ Z_{21} } \end{eqnarray}

となります.

ここで重要なことは F, Z, Y行列の相互変換の式を覚えることなどではありません. 「F, Z, Y行列が本質的に同じものを表しており, 相互変換が可能である」と理解することです.

電流の向きの取り方で符号が反転し, 参考書によっては上記と異なる符号となる場合もありますので, 十分注意してください. ベストは都度自分で計算することで, F, Z, Y行列の定義を理解できていれば, ゼロから相互変換の式を導出できます.

蛇足:あまり大事ではないこと(n端子対回路網)

4端子回路網(二端子対回路網)の Z行列は2元1次(線形)連立方程式を $2 \times 2$ 行列に書き換えることで導出されます.

同様に三端子対回路網の Z行列は3元連立方程式を $3 \times 3$ 行列に置き換えることで導出可能です. Y行列も同じ.

数字を大きくしていけば, n端子対回路網の Z行列, Y行列は $n \times n$ 行列になることが分かるかと.

また, 一端子対回路網における Z行列, Y行列とはそれぞれインピーダンスとアドミタンスそのものです.

4端子回路網の接続

中学から高校まで習ってきた『回路』の中で, 回路の要素を『足し合わせる』もしくは『変形する』操作は「直列接続」と「並列接続」(マニアックな所で「Δ-スター変換」)ぐらいのものでしたが, ここにきてやっと新たな接続ができます.

F行列による縦続接続

F行列を使うことで可能となるのが「縦続接続」です. 下図をご覧ください.

図5 2つの回路網の縦続接続

縦続接続とは4端子回路網の出力端子対と別の回路網の入力端子対を接続することです.

図中左側の回路網の F行列を $F_1 = \left[ \begin{array}{rr} A_1 & B_1 \\ C_1 & D_1 \end{array} \right] $, 右側の回路網の F行列を $F_2 = \left[ \begin{array}{rr} A_2 & B_2 \\ C_2 & D_2 \end{array} \right] $ と置くと, 電流電圧の関係は以下のように表されます.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, v_{1i} \\ \, i_{1i} \end{array} \right] &=& \left[ \begin{array}{rr} A_1 & B_1 \\ C_1 & D_1 \end{array} \right] \, \left[ \begin{array} \, v_{1o} \\ \, i_{1o} \end{array} \right] \; \cdots \; (5) \\ \rm{ } \\ \left[ \begin{array} \, v_{2i} \\ \, i_{2i} \end{array} \right] &=& \left[ \begin{array}{rr} A_2 & B_2 \\ C_2 & D_2 \end{array} \right] \, \left[ \begin{array} \, v_{2o} \\ \, i_{2o} \end{array} \right] \; \cdots \; (6) \end{eqnarray}

左側回路網の出力端子対と右側回路網の入力端子対は一致しているので, 電流と電圧についての以下の関係が成り立ちます.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, v_{1o} \\ \, i_{1o} \end{array} \right] = \left[ \begin{array} \, v_{2i} \\ \, i_{2i} \end{array} \right] \; \cdots \; (7) \end{eqnarray}

式(5) – (7)より, 以下の式が導かれます.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, v_{1i} \\ \, i_{1i} \end{array} \right] &=& \left[ \begin{array}{rr} A_1 & B_1 \\ C_1 & D_1 \end{array} \right] \, \left[ \begin{array}{rr} A_2 & B_2 \\ C_2 & D_2 \end{array} \right] \, \left[ \begin{array} \, v_{2o} \\ \, i_{2o} \end{array} \right] \; \cdots \; (8) \end{eqnarray}

式(8) の意味するところは, 「縦続接続(出力端子対と入力端子対の接続)は F行列の積で表される」ということです. これは回路を3つ, 4つと縦続に接続する場合も適用できます.

縦続接続の図を見ると, F行列を使った回路網においては電流の向きが Z行列のときと逆向きであった理由がお分かり頂けるでしょう. 電流の向きを右側に向けておかないと上手く縦続接続できないのです.

Z行列による直列接続

下図のように4端子回路網を接続することを直列接続と呼びます.

図6 Z行列による直列接続

図中右側端子をすべて消去すれば, 中学までに習った直列接続と同じであることが分かります. 即ち, ここで述べる「直列接続」とは一端子対回路の直列接続を拡張した概念です.

図中の電圧は以下の関係にあります.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, v_{out} \end{array} \right] = \left[ \begin{array} \, v_{in}^{\prime} \\ \, v_{out}^{\prime} \end{array} \right] \, + \, \left[ \begin{array} \, v_{in}^{\prime \prime} \\ \, v_{out}^{\prime \prime} \end{array} \right] \; \cdots \; (9) \end{eqnarray}

Z行列を用いて (9)式を整理すると,

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, v_{out} \end{array} \right] = Z^{\prime} \, \left[ \begin{array} \, i_{in} \\ \, i_{out} \end{array} \right] \, + \, Z^{\prime \prime} \, \left[ \begin{array} \, i_{in} \\ \, i_{out} \end{array} \right] = \left\{ Z^{\prime} \, + \, Z^{\prime \prime} \right\} \, \left[ \begin{array} \, i_{in} \\ \, i_{out} \end{array} \right] \; \cdots \; (10) \end{eqnarray}

となり, 「4端子回路網の直列接続は Z行列の和で表される」ことが分かります.

ここで注意すべきことは, 電流の関係です. 回路の接続前には入力端子対に入る電流と出ていく電流は大きさが同じでしたが, この関係は回路の接続後も保たれていなければなりません. 回路の接続によって入出力電流の関係が崩れる場合は, Z行列による直列接続の計算はできないのです.

Z行列は直列接続の計算においては大変便利ですが, このような回路の接続にお目に掛かることは稀でしょう. Z行列の使用頻度は F行列ほどは多くないように感じます(主観です).

Y行列による並列接続

「回路の直列接続が得意なのが Z行列」ならば, 「並列接続が得意なのが Y行列」です.

「4端子回路網の並列接続」とは以下のような接続を指します.

図7 Y行列による並列回路

図中電流は以下の関係にあります.

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, i_{in} \\ \, i_{out} \end{array} \right] = \left[ \begin{array} \, i_{in}^{\prime} \\ \, i_{out}^{\prime} \end{array} \right] \, + \, \left[ \begin{array} \, i_{in}^{\prime \prime} \\ \, i_{out}^{\prime \prime} \end{array} \right] \; \cdots \; (11) \end{eqnarray}

Y行列を用いて整理すると,

\begin{eqnarray} \left[ \begin{array} \, i_{in} \\ \, i_{out} \end{array} \right] = Y^{\prime} \, \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, v_{out} \end{array} \right] \, + \, Y^{\prime \prime} \, \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, v_{out} \end{array} \right] = \left\{ Y^{\prime} \, + \, Y^{\prime \prime} \right\} \, \left[ \begin{array} \, v_{in} \\ \, v_{out} \end{array} \right] \; \cdots \; (12) \end{eqnarray}

となります. (11)式の意味するところは「4端子回路網の並列接続は Y行列の和で表される」です. Y行列の並列接続においても Z行列のときと同じく, 「入出力電流の関係が保たれていること」に注意が必要です.

まとめ

昔読んだ本で「自然科学研究とは何か?」という問いに対し, 物理学研究者が以下のような回答をしていました.

” 自然科学研究とは, 内部を覗き見ることができない袋の中に入っている「何か」を明らかにするゲームのようなものだ. プレイヤーは袋を開けて中を見ることはできないが, 袋を揺さぶったり, 床にぶつけて音を聞いたり, 加熱してみたり, X線で中を透過して見たりすることができる. そうして間接的に内部を知る「手段」が「実験」であり, 「反応を吟味する作業」が「解析」なのだ. このゲームの楽しみ方は「中身を当てる」だけに非ず. 「手段」を考えたり, 「反応を吟味する」ことも自然科学研究の楽しみ方である. “

4端子回路網という考え方は内部をブラックボックスとし, 外部からの入力と外部への出力のみによって内部を明らかにする解析手法です.

私はここに物理学全般に通用する考え方が詰まっているように感じています.

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