ミリしら確定申告
税理士でも何でもない, ただの個人事業主が確定申告の方法をレクチャーします.
目次
本稿の意義
なぜ税理士でもないのに確定申告の方法について書こうと思ったのか. それはネット上に分かりやすい確定申告の方法が書かれていなかったためなのですが, これには正確な情報を伝えなければならない, という制約が関与しているように感じます.
確定申告の方法をネット上にアップしているのは, 国税庁だったり税理士だったりします. 彼らは税法のプロであるゆえに適当なことを書くわけにはいきません. しなければいけないことに対して, その根拠となる法や過去の事例を挙げながら懇切丁寧に説明してくれます. 結果として, 彼らの説明はウンザリするほど長く, 分かりにくいものです.
我々, 一個人事業主が知りたいことは, どうすれば怒られず, 素早く確定申告を終わらせられるか, ということでしょう. 税法の仕組みに興味はありません. そうした方に向けてならば, 私の方が分かりやすく伝えられると思いました. 何しろ, 彼らには「税法のプロ」という枷があります.
以下では, 私が「3年前に知っていたらもっと楽だったのに」と思うことを書いていきます.
確定申告手順
まず, 税理士に全部丸投げするか否かという問題がありますが, これは事業の規模に依ります. 300万円以下くらいの事業規模であれば, 3時間あれば確定申告の全プロセスは終了します. 3時間の自分の時給と, 税理士に払う報酬を天秤に掛けて判断しましょう.
事業規模が1000万円を超えてくるようでしたら, 税理士に頼まない選択肢はほぼないと思います. そんなに稼いだことないのでよく分かりませんが.
1. 個人事業主を始めたときに
個人事業主を始めるにあたって, 多くの方が青色申告を勧めますが, これには私も賛成です. 白色申告よりも手順は幾分煩雑になりますが, 20万円ほど多くの控除が貰えます. つまり, 3時間分のデータ入力労働で20万円貰えることと同義です.
青色申告をするためにはそのための申請が必要なので, 開業する際に同時に申請をするとよいでしょう. 方法は「青色申告 申請」とかでググって下さい.
また, マイナンバーと連携できるのでスマホで申告するのが便利です. PCでマイナンバーと連携するためにはマイナンバーを読み取るための専用の機器を購入する必要があります. 私も作業全部PCでやりたかったのですが, PCとマイナンバーが連携できないと知らずにグダりました. 現在は申告書類の作成までをPCで行い, 書類の提出はスマホでやっています.
確定申告が近くなると確定申告を宜しくお願いする封筒が届くのですが, この中のどこかに8桁の整理番号が記載されています. スマホをはじめとしたネットでの確定申告のためにはこの番号が必要となるので, 写真などに撮って保存しておきましょう.
2. freee有料プランに加入
私は会計ソフトとして, クラウドの「freee会計」を利用しています. これしか使っていないので, 他のソフトのことは知りません.
まず重要なこととして, このソフトはfreeeという名前ですが無料ソフトではありません. 確定申告のための書類を作成するためには, どう頑張っても1500円を支払う必要があります. 正確に言えば, 無料でも書類完成の一歩手前までは到達できます. 完成した書類を出力することができません. 阿漕な商売です.
freee有料プランは1カ月ごとに更新が必要で, 月の最後までは利用できます.
確定申告の期間は2/15~3/15で, 書類に不備があれば3月後半に電話が掛かってきて訂正をお願いされます. よって, いつでも訂正できるように, 3/1に有料プランに入って, 月末に解約するのがオススメです.
3. 収支を全て記入
会計ソフトに書類を作らせるためには事業に係る全ての収支を入力する必要があります.
画像の「取引の一覧・登録」から入力します.
入力が必要なのは「収支」, 「決済」, 「口座」, 「発生日」, 「取引先」, 「勘定科目」, 「金額」の7箇所です. 他の所は記入してもしなくても, どちらでも構いません. 税務署に聞かれたときに返答できるよう, 品目や備考の欄を書いておくと安心できます.
自宅が個人事業主としての事務所を兼ねている場合は, 家賃や水道, 電気代, ネット代, 携帯電話料金も入れて大丈夫です. 社会保険料なども支出として入れて下さい. ただし, 社会保険料の勘定科目は事業主貸になりますので, そこだけ間違わないように.
ここからがグレーになってくるのですが, 例えば, 「コメダ珈琲で仕事をしたときに頼んだコーヒー」は経費として計上できますが, 「休憩のためだけに頼んだコーヒー」は経費には入りません. 経費としての判断のポイントは「事業のために必要な支出かどうか」です.
また, 判断の基準になると思うので紹介しますが, 「接待であればキャバクラも経費として計上可能」です. 詳しくは「キャバクラ 経費」でググって下さい. ここら辺が最低ラインだと思うので, 判断に迷ったときは思い出してみましょう.
4. 家事按分の設定
事業に係る全ての収支を入力し終わったら, 確定申告書類を作る工程に移るわけですが, その前に1点だけ, 家事按分の設定をやっておきましょう. 家事按分とは何かというと, 事業に使ったお金と個人の生活に使ったお金の割合の設定です.
上記, 収支の入力のところで, 家賃, 水道, 電気代, ネット代, 携帯電話料金も入れて大丈夫と言いましたが, 家賃や水道代は, 全て事業に使われているというわけではありません. 自宅と事務所を兼ねているわけなので, 一部は事業に, 一部は生活に使われているわけです.
確定申告をする際には, 家賃のうちの何%を事業のための経費として計上するかを決めます. これが家事按分です.
この割合の決め方には, 自宅の中の書斎の面積で計算したり, 1週間のうちの自宅で仕事をしている時間で決めたりする方法があるわけですが, 明確に決められるものではありません. そもそも私のようの物書きであれば, シャワーを浴びながら記事の構成を考えたり, Youtubeで音楽を聞きながら執筆したリするわけですので, 面積や時間で仕事と生活を明確に区分することはできません.
一般に, 30%を事業支出として計上(70%は生活のための支出)としておけばまず問題ありませんが, 50%を事業支出として計上するとなるとちょっと多い, となるようです. 大事なのは, 税務署に何か言われたとき, 「これこれこういう判断をしてこの割合です」と答えられることでしょう. その判断基準をちゃんと持っていれば, 70%でも問題ないですし, それで税務署に「それは流石に多すぎ」と言われたら, そのとき修正すれば良いのです.
5. 確定申告書類の作成
収支の入力と, 家事按分の設定が終わったら, 確定申告書類を作っていきます. とはいえ, ここまででほぼ全ての作業は終わっているので, 残りはスムーズです.
画像の「確定申告書類の作成」から〇×で質問に答えるだけですが, 家賃の所だけちゃんと入力する必要があります. 先ほどの家事按分の設定で入力した家賃を考慮して自分で計算し, freeeが計算した値と一致していればOKです.
入力が全て終わるとpdfが出力されますが, ここが有料プランでないと見れない部分になります. 無料プランではこの先に進めません. まだ有料プランに入ってない場合はここでお金を払って下さい.
出力したpdfは大事に保管しておきましょう. 青色申告の場合は所得を証明する書類を7年間保管しておく義務があるらしく, 保管しておかないと税務署に聞かれたときに厄介です.
6. 書類の提出と納税
作成した書類を提出しましょう. ここではfreeeのアプリが便利です.
freeeのアプリをスマホに入れて, 画面に出てくるQRコードを読み込み, 指示に従ってマイナンバーカードを読み取ると申告が終わります.
後は計算された納税額を納税します. 以上で確定申告終了となります.
確定申告のマインドセット
確定申告は毎年のことなので自身の中に何らかの蓄積はあるのですが, 毎度この時期になると前年度にやった作業を綺麗さっぱり忘れ, 「あれはどうやるんだっけ?」と右往左往することになります. 私も税務署の方に色々と間違いを正して頂きました. 本稿は自身への備忘録でもあります.
しかし, 確定申告の度に面倒な入力作業をしていると, なんでこんなことをしなければならないのかというフラストレーションが溜まってきます.
税は, 国が提供するインフラや福祉への対価なわけなのですが, 対価を支払うための前準備として労働が必要とはこれいかに. 例えば, コーヒーを買うときは店員にお金を払えば済むことです. 同じ税であっても商品の購入に付随する消費税は自動で計算されて勝手に支払いが終わります.
世界を見回してみると, エストニアではお金のやり取りを全て電子化することで, 面倒な所得計算を無くすことに成功したそうです. つまり, 確定申告のための煩雑な手続きを全て無くすことは技術的に問題なくできます. ではなぜ日本でそれが進まないのか.
それはルールを作る側の方々が電子化されると困るから, ということなのでしょう. 昨今の国会では自民党議員による裏金問題が取り沙汰されておりますが, この問題に関しても議員の活動資金の収支を全て電子化してしまえば解決することです.
我々, 普通の個人事業主はこうした国会議員の裏金を守るために, 煩雑なデータ入力作業をやらされているわけです. 日本の労働生産性が上がらないのも納得というもの. 働いたら負け, というわけですね. これを解決する手段が選挙しかない, というのが何とも悲壮感があります.
せめてもの抵抗として, このような煩雑な作業は可能な限り労力を使わずに終わらせるべきです. そういう意味で, 国と税理士以外の立場から「こうした方が簡単だよ」という意見がもっとたくさんあっていいと思うのですが.
携帯料金プランの契約を例として考えてみましょう. どのプランにするかを考えるとき, 携帯会社に電話して相談したらどうなるか. 当然, 最も割高で, 無駄な機能が豊富についたプランをオススメされることになります. そして, 払いすぎたお金が返ってくることは決してありません.
国はこの例で言うところの携帯会社なのですから, 国のHPを全面的に信頼して納税するのはあまりに愚かではないでしょうか. 税理士に尋ねれば納税額を極限まで抑える方法を教えてくれるでしょうが金が掛かります.
どこを見ても, 自身が不利になるような情報を懇切丁寧に教えてくれるソースなどありません. 確定申告freeeの使い方のサイトでは, 書類の出力が有料プランでないと行えないことに関して, 何の記載もありませんでした(※). 私のように利害関係のない, ただの一般人の情報が一番信用できると思うのですが, 口調が詐欺師っぽいですし正確ではない情報も含まれますので, あまり信用しないようによろしくお願いします.