フーリエ変換まであと一歩!フーリエの積分公式
フーリエ級数展開は \( a_0 \; /2 + a_1 \cdot \cos{x} + a_2 \cdot \cos{2x} + \) . . . と離散的な数値の無限和(級数)で周期関数を表します.
一方, 特別な操作を行うと, 無限級数( \( \sum \) )は積分( \( \int \) )に変換でき, 積分にすると離散的な値ではなく, 連続した値の和となります. ざっくり言えば, これがフーリエの積分公式です. 詰まる所, フーリエの積分公式とは, 「フーリエ級数展開の連続値形式」と言えましょう.
フーリエの積分公式はフーリエ変換へ至る最後の一歩です.
この記事では, 三角関数型のフーリエ積分公式を導出します.
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周期 \( 2 L \) のフーリエ級数展開(復習)
フーリエ級数展開と言いますと, 一般には周期 \( 2 \pi \) の周期関数を対象としますが, 周期 \( 2 L \) ( \( L \ne \pi \) ) でもフーリエ級数展開は可能です. 区間 \( [-L, L] \) で区分的に滑らかな \( f(x) \) につきまして,
$$ f(x) = \frac{a_0}{2} + \sum_{m=1}^{\infty} \left( a_m \cos{\frac{m \pi x}{L}} + b_m \sin{\frac{m \pi x}{L}} \right) $$
となり, 係数は以下のように表されます.
\begin{eqnarray} a_0 &=& \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} f(x) dx \\ a_m &=& \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} f(x) \cos{\frac{m \pi x}{L}} dx \\ b_m &=& \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} f(x) \sin{\frac{m \pi x}{L}} dx \end{eqnarray}
詳細は以下の記事をご参照ください.
フーリエの積分公式(周期 $ \infty $ のフーリエ級数展開)
上記のフーリエ級数展開は周期 \( 2 L \) でした. これを \( L \rightarrow \infty \) とし, 周期 \( \infty \) のフーリエ級数展開へ拡張します. するとフーリエの積分公式が得られます. どういうことか実際に見て頂きましょう.
まず, 先ほどの周期 \( 2 L \) のフーリエ級数展開の式に係数を代入します.
\begin{eqnarray} f(x) = \frac{1}{2L} \int_{-L}^{L} f(x) dx &+& \frac{1}{L} \sum_{m=1}^{\infty} \; \Big[ \cos{ \frac{m \pi x}{L} } \int_{-L}^{L} f( \omega ) \cos{ \frac{m \pi \omega}{L} } d \omega \\ &+& \sin{ \frac{m \pi x}{L} } \int_{-L}^{L} f( \omega ) \sin{ \frac{m \pi \omega}{L} } d \omega \; \Big] \cdots (1) \end{eqnarray}
ここで, \( f(x) \in L^1 (\mathbb{R}) \) , 即ち,
$$ \int_{- \infty}^{\infty} \left| f(x) \right| dx < \infty $$
ならば, (1)式の右辺第1項は \( L \rightarrow \infty \) でゼロになります.
次に,
\begin{eqnarray} \omega _m &=& \frac{m \pi }{L} \\ \Delta \omega &=& \omega _{m+1} – \omega _m = \frac{(m+1) \pi }{L} – \frac{m \pi}{L} = \frac{\pi}{L} \end{eqnarray}
とおくと, \( L \rightarrow \infty \) で, \( \Delta \omega \rightarrow 0 \). したがって, (1)式は以下のように変形できます.
\begin{eqnarray} f(x) = \lim_{\Delta \omega \to 0} \frac{\Delta \omega}{\pi} \sum_{m=1}^{\infty} \; &\Big[& \cos{( \omega _m x)} \int_{- \infty}^{\infty} f(\xi) \cos{( \omega _m \xi )} d \xi \\ &+& \sin{( \omega _m x)} \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \sin{( \omega _m \xi )} d \xi \; \Big] \cdots (2) \end{eqnarray}
リーマン積分の定義(積分とは, とある曲線と \( x \) 軸とで囲まれた領域を限りなく細長い長方形の面積の和で表すこと)から,
$$ \lim_{\Delta \omega \to 0} \sum_{m=1}^{\infty} \Delta \omega F(\omega _m ) \rightarrow \int_{0}^{\infty} d \omega F(\omega ) $$
となるので, (2)式は以下のように表すことができます.
\begin{eqnarray} f(x) = \frac{1}{\pi} \int_{0}^{\infty} &\Big(& \cos{( \omega _m x)} \int_{- \infty}^{\infty} f(\xi) \cos{( \omega _m \xi )} d \xi \\ &+& \sin{( \omega _m x)} \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \sin{( \omega _m \xi )} d \xi \; \Big) d \omega \end{eqnarray}
これを三角関数の加法定理を使って整理すると,
\begin{eqnarray} f(x) &=& \frac{1}{\pi} \int_{0}^{\infty} &\bigg[& \int_{- \infty}^{\infty} f(\xi) \Big( \cos{( \omega _m x)} \cos{( \omega _m \xi )} d \xi \\ &\;& &+& \sin{( \omega _m x)} \sin{( \omega _m \xi )} \Big) d \xi \; \bigg] d \omega \\ &=& \frac{1}{\pi} \int_{0}^{\infty} &\bigg(& \int_{- \infty}^{ \infty } f( \xi ) \cos{ \omega (x- \xi )} \; d \xi \bigg) d \omega \end{eqnarray}
となり, フーリエの積分公式が導かれました.
フーリエの積分公式(三角関数型)
\( f(x) \in L^1 (\mathbb{R}) \) かつ, 区分的に滑らかであるとき,
$$ f(x) = \frac{1}{\pi} \int_{0}^{\infty} \bigg( \int_{- \infty}^{ \infty } f( \xi ) \cos{ \omega (x- \xi )} \; d \xi \bigg) d \omega $$
が成り立つ.
フーリエ級数展開が成立する条件は, 周期的, かつ区間内で区分的に滑らかなことでした. 一方, フーリエ積分においては周期的である必要はありませんが, 初項が発散しないように, \( f(x) \in L^1 (\mathbb{R}) \) という条件が必要になります.
まとめ
フーリエの積分公式は周期 \( \infty \) のフーリエ級数展開であり, 離散値ではなく, 連続値で表された展開式です.
そして, フーリエ積分公式は, フーリエ変換と密接な関係があります. この辺りのことを次回解説します.