この記事では, フーリエ変換とは何なのか, について語ります.
フーリエ変換は, それ単体で理解できるものではございません. フーリエ級数展開, オイラーの公式(複素数について), 級数( $ \sum $ )→ 積分( $ \int $ )の変換, フーリエ積分などが組み合わさって理解できるものですし, フーリエ変換は実用的な数学操作であることを考慮すれば, フーリエ変換の形式的理解は真にフーリエ変換を理解するためのスタートでしかないとも言えるでしょう.
初めてフーリエ変換を学ぶ方に理解しやすいよう善処致しますが, 理解が難しい場合には過去記事をご参照してもろて.
目次
指数関数型のフーリエ積分
指数関数型のフーリエ積分を導出するために, 三角関数型のフーリエ積分公式, 及び, 指数関数型のフーリエ級数展開をおさらいしておきます.
復習
周期 2$ L $ のフーリエ級数展開を $ L \rightarrow \infty $ とすると, フーリエの積分公式が導出できます.
$$ f(x) = \frac{1}{\pi} \int_{0}^{\infty} \left( \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \cos{ \omega (x- \xi)} \; d \xi \right) d \omega \cdots (1) $$
詳しくは以下記事をご参照下さい.
また, フーリエ級数展開には, 複素形式(指数関数型)なるものが存在したのでした.
\begin{eqnarray} f(x) &=& \sum_{m= – \infty}^{\infty} A_m e^{imx} \cdots (2) \\ \bigg( A_m &=& \frac{1}{2 \pi} \int_{- \pi}^{\pi} f(x) e^{-imx} dx \bigg) \end{eqnarray}
これを導出するときと全く同じ方法で, フーリエの積分公式にも複素形式(指数関数型)の導出ができます.
上記リンクの記事では, 複素形式 → 三角関数形式で示しましたが, 今回は逆向き(三角関数形式 → 指数関数形式)で示してみようと思います.

導出
オイラーの公式
\begin{eqnarray} e^{i \theta} &=& \cos{\theta} +i \sin{\theta} \\ e^{- i \theta} &=& \cos{\theta} -i \sin{\theta} \end{eqnarray}
より, 辺々足すと,
\begin{eqnarray} e^{i \theta} + e^{-i \theta} = 2 \cos{\theta} \end{eqnarray}
よって,
$$ \cos{\theta} = \frac{e^{i \theta} + e^{-i \theta} }{2} \cdots (3) $$
(3)式を三角関数型のフーリエ積分公式( (1)式 )に代入して整理すると,
\begin{eqnarray} f(x) &=& \frac{1}{\pi} \int_{0}^{\infty} &\bigg(& \int_{- \infty}^{\infty} f(\xi) \frac{e^{i \omega (x- \xi )} + e^{- i \omega (x- \xi )} }{2} d \xi \bigg) d \omega \\ &=& \frac{1}{2 \pi} \int_{0}^{\infty} &\bigg[& \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \; e^{i \omega (x – \xi ) } \; d \xi \bigg] d \omega \\ &\;& &+& \frac{1}{2 \pi} \int_{0}^{\infty} \bigg[ \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \; e^{-i \omega (x – \xi ) } d \xi \; \bigg] d \omega \end{eqnarray}
2項目で $ \omega \rightarrow – \omega $ と変数変換すると,
\begin{eqnarray} f(x) &=& \frac{1}{2 \pi} \int_{0}^{\infty} &\bigg[& \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \; e^{i \omega (x – \xi ) } \; d \xi \bigg] d \omega \\ &\;& &+& \frac{1}{2 \pi} \int_{0}^{- \infty} \bigg[ \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \; e^{i \omega (x – \xi ) } d \xi \; \bigg] (- d \omega) \\ &=& \frac{1}{2 \pi} \int_{0}^{\infty} &\bigg[& \;\;\;\;\; \bigg] d \omega + \frac{1}{2 \pi} \int_{- \infty}^{0} \bigg[ \;\;\;\; \bigg] d \omega \\ &=& \frac{1}{2 \pi} \int_{- \infty}^{\infty} &\bigg[& \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \; e^{i \omega (x – \xi ) } d \xi \; \bigg] d \omega \end{eqnarray}
となり複素形式のフーリエ積分が導出できました. 目出度し!

フーリエ変換
得られた複素形式のフーリエ積分を少々変形して, 複素形式のフーリエ級数展開((2)式)と比較してみます.
\begin{eqnarray} f(x) &=& \frac{1}{2 \pi} \int_{- \infty}^{\infty} \bigg[ \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \; e^{- i \omega \xi } \; d \xi \; \bigg] e^{i \omega x } d \omega \\ f(x) &=& \frac{1}{2 \pi} \sum_{m= – \infty}^{\infty} \bigg( \int_{- \pi}^{\pi} f(\xi ) e^{-im \xi } d \xi \bigg) e^{imx} \end{eqnarray}
分かりやすく対応させるために変数を合わせました.
フーリエ級数展開とフーリエ積分は「周期 2$ \pi $ か $\infty$ か」という点と「離散か連続か」という点が異なりますが, 意味するところは同じで「とある関数を別の形に展開したもの」です.
フーリエ級数展開の係数部分
$$ \int_{- \pi}^{\pi} f(\xi ) \, e^{-im \xi } \, d \xi $$
に対応するのが, フーリエ積分における
$$ \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \, e^{- i \omega \xi } \, d \xi $$
の部分です. このフーリエ積分の中の, フーリエ級数展開の係数にあたる部分を「フーリエ変換」と呼びます.
フーリエ変換の定義
$$ \mathcal{F}[f] \, (\omega) = \int_{- \infty}^{\infty} f( \xi ) \; e^{- i \omega \xi } \; d \xi $$
ということで, フーリエ変換を一言で言えば,
「複素形式で表されたフーリエ積分の中の, フーリエ級数展開の係数に対応する部分」ということになるかと.
補足
(1) 私自身としましては, フーリエ変換を理解するにあたって, フーリエ級数展開との対応で考えると理解しやすかったです. 理解が難しかった方はフーリエ級数展開の式とよく見比べてみてください.
(2) フーリエ変換において, 変換前の元の関数と変換後の関数は全く別物です. ご注意を.
(3) 「変数の多さ」もフーリエ変換の理解の難しさを助長しています. 今回の記事の中には, $x, \; \omega , \; \xi$ という3つの変数が現れます. それぞれの意味を述べますと,
$ x \cdots $ フーリエ変換前の元の関数( $ f $ )の変数.
$ \omega \cdots $ フーリエ変換後の関数( $ \mathcal{F} $ )の変数.
$ \xi \cdots $ フーリエ変換に使う積分変数. フーリエ変換をすると, 最終的に消えてなくなる.
教科書によって, 使っている文字が異なりますので, 他の解説書を参照するときには, どの文字がどの役割の文字なのかを意識しないと, 混乱して帰って来れなくなります. 重々注意してください.
まとめ
ご覧頂き誠にありがとうございます.
この度は「フーリエ変換とは何か?」という点に焦点を絞って解説を試みたため, フーリエ逆変換のことも言っていませんし, フーリエ変換の持つ諸性質についても触れておりません. その辺りのことは次回お話しします.
また, 再三述べますが, フーリエ変換は実用的な数学操作ですので, 「フーリエ変換をどう使うのか?」や「フーリエ変換の物理的意味」といったことの方が重要です.
逆に言えば, どう使うのか, ということが分からなければ, フーリエ変換の真の重要性は理解できないかと. そういった意味では, 今回の記事からやっとフーリエ変換はスタートします. フーリエ変換が分からなくなったときにはいつでも戻って来て頂ければ幸いです.