Imaginary Dive!!

複素数, 研究, 科学について

複素数基礎

複素指数関数の定義を考え、オイラーの公式を導出 (証明)する

投稿日:2020年5月30日 更新日:

オイラーの公式の導出 (証明)をやります.

$$ e^{i \theta} = \cos{\theta} + i \sin{\theta} $$

オイラーの公式について, 私が最も理解に苦しんだのは $ e^{i \theta} $ の部分でした. 今まで -2 乗や, 1/2 乗はやってきたけども, 虚数乗てなんやねん, と思わはるでしょう. どないして証明すんねん, と.

虚数乗について理解できない理由は, 「指数関数の厳密な定義」を知らないからです. $ e^x $ について, $ e $ を $ x $ 回掛ける関数だと思っていてはオイラーの公式を理解することができません.

ここでは, 指数関数, 三角関数の厳密な定義を考えた後, 指数関数, 三角関数を複素関数へと拡張し, オイラーの公式を導出いたします.

指数, 三角関数の厳密な定義

「$ e^x $ について, $ e $ を $ x $ 回掛ける関数だと思っていてはオイラーの公式を理解することができません.」と申し上げましたが, もちろん指数関数の成り立ちから考えて, 上記の考えは間違いではないわけです. ただし, それは指数関数というものの一部分を表しているに過ぎません.

私も積分を知らない人に積分を説明し, 分かった積りにさせるため, 「曲線とx軸で囲まれた部分の面積を求める操作だよ」と教えることはありますし, 微分を微かに分からせるため, 「曲線の傾きを求める操作だお」と教えることもあります.

しかしながら積分の厳密な定義は「リーマン積分」や「ルベーグ積分」なわけで, 微分の厳密な定義は「変化の割合の極限値」なわけです.

それが分かっていないと, 周回積分をするときに「これどこの面積なの?」となりますし, マクローリン展開の式を見て, 「曲線の傾きと, 傾きの傾きと, 傾きの傾きの . . . が並んでる. なんで?」となります. 厳密な定義を分かっていないからです.

> マクローリン展開について

指数関数

虚数乗を考えるため, 指数関数を再定義します.

$$ e^x = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!} = 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \frac{x^4}{4!} + \cdots $$

定義って . . . マクローリン展開やんけ . . .

もちろん, 歴史的には, 最初からこの定義があったわけではないです. 指数関数が既に存在している世界で, 「指数関数って何やろ」と考えた人がマクローリン展開を使って, 指数関数を定義し直したわけです.

上記の定義においても, 指数関数が持っていた様々な性質の一切は引き継がれます.

試しに $ x=0 $ を代入すれば,

$$ e^0 = 1 $$

となりますし, 微分してみると,

$$ ( e^x )’ = 0 + 1 + \frac{2x}{2!} + \frac{3x^2}{3!} + \cdots = e^x $$

となっています.

三角関数

続いて三角関数の定義についても考えます. 高校でちゃんと勉強した人は三角関数の定義を知っているはずです.

三角関数は「直角三角形の鋭角の角度を変数とし, 2辺の比を返り値とする関数」で, これが定義でした.

しかし, この定義は幾何学を土台とするものであり, 三角関数を関数として考え, 他の関数との関係を考える上では使いづらいので, 別の定義を使います.

$$ \cos{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n}{(2n)!} x^{2n} = 1 – \frac{x^2}{2!} + \frac{x^4}{4!} + \cdots $$

$$ \sin{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n}{(2n+1)!} x^{2n+1} = \frac{x}{1!} – \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} + \cdots $$

定義って . . . マk(ry

この定義を使えば, 幾何学に依存することなく, ただの冪級数の和として三角関数を考えることができます.

数学をやるときに定義は1つでないことは知っておくべきかと. こう考えると都合が良いからこう考えただけです. 必要に応じた適切な形であり, 三角関数が持っているすべての性質を維持しています.

真実はいつも1つ, ではないように, 定義も1つではありません.

当たり前のことなのですが, 日本では暗算が得意などこぞの名探偵の所為で間違った認識が広まっているようです.

複素関数への拡張

上記で定義した指数関数, 三角関数はあくまで実数での使用を前提とした実数関数です. この実数関数共を複素数を入れて使える複素関数へと拡張します.

拡張とは「概念を拡げること」. 今までも知らないうちにやっています.

数直線をマイナスの方へ拡げたり, 2次元平面上で曲線を考えていたところから, 3次元空間へ考える範囲を拡げたり.

概念を拡げるときに注意すべきことは, 元の概念を崩さないことです. 新しい概念を作って, 元の概念をいい感じに内包するようにします.

指数関数や三角関数を複素指数関数や複素三角関数にすることは簡単で, 上記, 指数・三角関数の定義における実数 $ x $ を複素数 $ z $ に置き換えるだけです.

$$ e^z = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{z^n}{n!} = 1 + z + \frac{z^2}{2!} + \frac{z^3}{3!} + \frac{z^4}{4!} + \cdots $$

$$ \cos{z} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n}{(2n)!} z^{2n} = 1 – \frac{z^2}{2!} + \frac{z^4}{4!} + \cdots $$

$$ \sin{z} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n}{(2n+1)!} z^{2n+1} = \frac{z}{1!} – \frac{z^3}{3!} + \frac{z^5}{5!} + \cdots $$

複素数の冪乗は計算できますので, 上記の式はすべて計算できます.

これで指数関数, 三角関数を複素数へと拡張することができました.

オイラーの公式の導出

上記, 複素指数関数について, 特に, $ z $ が純虚数であり, $ ix $ ($ x $ は実数)と表されるとき, 以下のようになります.

$$ e^{ix} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{i^n}{n!} x^n = 1 + ix – \frac{x^2}{2!} -i \frac{x^3}{3!} + \frac{x^4}{4!} + \cdots $$

実部と虚部に分けて整理すると,

\begin{eqnarray} e^{i x} &=& \sum_{n=0}^{\infty} \frac{i^n}{n!} x ^n \\ &=& \sum_{n=0}^{\infty} \frac{i^{2n}}{(2n)!} x ^{2n} + \sum_{n=0}^{\infty} \frac{i^{2n+1}}{(2n+1)!} x ^{2n+1} \\ &=& \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^{n}}{(2n)!} x ^{2n} +i \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^{n}}{(2n+1)!} x ^{2n+1} \end{eqnarray}

となります. 三角関数の定義と比較すると,

$$ e^{i x} = \cos{x} + i \sin{x} $$

が得られ, オイラーの公式が示されました.

まとめ

$ i $ の2乗で上手いことマイナスが出てきたり, cos と sin で過不足なく, ぴったり一致するところが綺麗ですよね.

$ e^z $ を 「$ e $ を $ z $ 回掛けた関数」という考えから脱却し, 「$ e^{z} $ をマクローリン展開した形こそが, 複素指数関数の定義だ」と考えることからすべての問題は氷解します.

非常に難しい概念ですし, 一度で全部分かる必要はないかと. 本を読んでみたり, ネットで更に検索してみたり, この記事を読み返してみたり, ゆっくりやったら良いと思います.

-複素数基礎
-, , , , , , , , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

分母に複素変数の2乗を持つ複素関数の積分

電気回路をやってたり, 信号解析をやっていると急に複素数の知識を求められることがあります. 「これぐらい知ってて当然だろ?」という体でひょっこり現れ, 人々を置き去りにして虚数世界に消えていく. 残さ …

複素形式のフーリエ級数展開とは何か

フーリエ級数展開の式 $$ f(x) \sim \frac{a_0}{2} + \sum_{m=1}^{\infty} a_m \cos{mx} + b_m \sin{mx} $$ を見づらい, 美し …

複素数, 虚数とは何か?複素数の歴史、虚数単位、複素数の分類

複素数 (虚数)とは何なのか? 高等学校で学ぶのは複素数の初歩のみ. これが何の役に立つのか, 高校で学ぶことはありません. 本サイトでは複素数の活用, 何に利用されるのか, を解説していきます. 本 …

複素数の極形式と回転

実数平面上の点は, 直交座標表示と, 極座標表示で表すことが可能です. 複素平面 (ガウス平面)においても直交座標で表す方法と極座標で表す方法があります. 複素数を極座標っぽく表すことを極形式と言い, …

フーリエ逆変換とフーリエ変換の諸性質

フーリエ変換には色々と便利な特徴がありまして, 知っていると後の計算が大変便利!というより知らないとフーリエ変換を扱えないので, ここでそれらの特徴についてまとめます. 前回の復習 → フーリエ逆変換 …