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光の歴史と発光原理

投稿日:2020年9月10日 更新日:

人類史は「火」の使用に始まり, 技術革新とともに様々な光を創造してきました.

光に関する技術は「火」を第1世代として, 第2世代は「白熱灯」, 第3世代は「蛍光灯」, 第4世代は「LED」と言われ, 現在は第3から第4世代への転換期にあると考えられます.

生活には不可欠な「光」ですが, 光源によってその原理は様々.

本稿では光と人類の歴史を概観した後, 各世代の光の発生原理について述べます.

光と人類の歴史

人類史の始まりを「ホモサピエンスとしての種の発生」と捉えるか「言葉の使用」と捉えるか「火の使用」と捉えるかは諸説ありますが, 初期の人類の発展に「火の使用」が大きく関わることは間違いありません.

火の使用によって人類は食物を調理できるようになり, 食物の消化に必要な時間が短縮されることで活動時間が大幅に増えました. 同時に, 森林を焼き払い, 土地を改変する力を得たのです.

「熱源としての火」は人類の生活を大きく変えましたが, 「光源としての火」も重要な性質です.

ただし, 光源として火を使う場合には, 「高温である」という火の性質は大変厄介でした. 何せ手で持てません.

火が持つ「光源としての性質」のみを利用するため作られたのが松明です. 燃焼部と持ち手で距離を作ることで, 高温による人体の損傷を防ぎ, 利便性が向上しました.

光源としては長時間燃え続けることが望ましく, 材料や製法に様々な工夫がされました. その延長にあるのが, 蝋燭やアルコールランプです. これらの発明により, 火は大変扱いやすく, 人類の生活に不可欠なものとなりました.

火が扱いやすい形になり, 日常生活に溶け込んだとは言え, 火が本質的に持っている危険性を完全に消し去ったわけではありません. 蝋燭やランプの火は転倒によって簡単に燃え広がり, 被害が広がってしまいます. 「火事」は江戸で最も恐れられる災害の1つでした.

これを解決したのが, 電球などの白熱灯の発明です. 発明者はジョゼフ・スワン, 後にトーマス・エジソンが寿命を改良し, 19世紀の世界に新たな光を広めました.

この辺りから「火」を使わない様々な形の光が登場します. その1つが現代でも使われている蛍光灯です. 電気を光に変換している点は白熱灯と同じですが, 熱としてのエネルギー損失が少ないことが蛍光灯の特徴です.

白熱灯を第2世代, 蛍光灯を第3世代と呼び, 近年登場したのが, 第4の光源, LEDです.

他の光源と比較して変換効率も圧倒的ですが, LED最大の特徴はその寿命であり, 原理的には半永久的に使用できます. 蛍光灯と違い, 固体の光源であるため, 物理的に壊れにくい, という点も特徴です.

青色発光するLEDの開発という技術的な課題は日本人科学者によって解決され, 後にノーベル物理学賞を受賞しました. 信号や天井を見上げればLEDの光源が普及していることを感じられます.

人類史の中では火を使っていた期間が圧倒的に長く, ここ200年ほどで目まぐるしく技術の入れ替わりが起きています. 現在LEDを完全に駆逐できるような技術は存在せず, 今後長らく光源としてはLEDが使われることでしょう.

光の発生原理

上で登場した4つの光源(火, 白熱灯, 蛍光灯, LED)はそれぞれ異なる原理によって発光しています. 本章ではそれら光源の発光原理を1つずつ解説していきます.

火:化学エネルギーの放出

「火」とは物質の急激な酸化によって起きるモノであり, 現象です.

中学校で習った通り, 主に炭素と水素から成る有機物が酸素と結合すると二酸化炭素と水ができます. 例として, エタノールを燃焼させたときの化学反応式を以下に示します.

$$ C_2 H_5 OH + 3O_2 \rightarrow 2CO_2 +3H_2 O $$

ここで, 反応前の物質が持つ化学エネルギーと反応後の物質が持つエネルギーには差があり, 反応後の方がエネルギーが少なくなっています. そのエネルギーが「熱」や「光」となって放出されるのです.

この光が, 火による光です.

反応が始まるためには一定のエネルギー(活性化エネルギー)が必要なのですが, 一度反応が始まると, 反応時に生じた熱が更なる反応を促進し, 連続的に反応が進んでいきます.

図 燃焼

火が赤色である理由は黒体放射によって説明がなされます. こちら興味の湧いた方はご自身で調べてみてください.

白熱灯:電熱線

電球, 白熱灯は最近あまり見かけなくなりましたが, これは電気エネルギーを光と熱に変換します.

白熱灯の構成要素の大部分を占めるのは「電気抵抗(電熱線)」です.

再び中学で習ったことを思い出して頂きたいのですが, 抵抗 $R$ に電流 $I$ を流すと,

$$ P=RI^2 $$

の電力(単位時間当たりのエネルギー)が生じます. このエネルギーの大部分(95%ほど)は熱になりますが, 一部光になって周囲を照らします. 「電気が熱と光になる」というよりは, 「電気が熱になり, 熱くなったから光る」と言ったほうが正確でしょう.

白熱灯という名前は「火」に比べて「白い」光だったことに由来します.

初期の白熱灯は電熱線がすぐに焼き切れてしまい寿命が短かったのですが, エジソンが電熱線として相応しい材料を探し求め, 日本の竹を使って寿命を大きく伸ばした, という話は有名です.

現在の白熱灯には融点の高い丈夫な金属, タングステンが使われています.

蛍光灯:アーク放電

蛍光灯の中には水銀蒸気が封入されています. 水銀というと危なそうなイメージですが, 濃度はかなり低く, 人体に吸収されても排出されるタイプの水銀(無機水銀)なので, そこまで危なくはないようです.

とは言え環境への負荷は無視できないらしく, 2013年に締結された水俣条約によって, 2020年からは一定量の水銀が含まれる蛍光灯は製造中止となりました. これから蛍光灯は漸減していくことでしょう.

蛍光灯の発光に大きく関わるのは「放電」と「輻射失活」です.

蛍光灯は水銀蒸気を電極と電極で挟んだ形をしています. 気体分子間の平均距離は固体や液体と比べてとても大きいので, 通常, 電子は気体分子間を移動できません. すなわち気体の電気伝導率は大変小さく, 絶縁体と見なせます.

しかし, 絶縁体である気体の両端に大きな電圧が加えらると電気が流れます. これが「放電」です. 冬にバチっとなる, アレですね. 冬の静電気は一瞬ですが, 蛍光灯内部では放電が持続的に発生しています.

電極から放出された電子は電極間に存在する水銀蒸気を電離し, プラズマ(陽イオンとなった気体分子)を形成します. プラズマは電荷を帯びており, 電気伝導度がとても高いので, 電子はプラズマの中を伝導できるようになります. 電子が流れることで連続的にプラズマができ, 安定して電子が伝導する経路が形成されるのです.

プラズマとなった分子は高いエネルギーを持ち, 不安定なので, 電子を捕まえてただの気体分子に戻ろうとします. プラズマがただの気体分子に戻るとき余分なエネルギーが生じ, これが光となって放出されます(輻射失活).

より正確に言えば, プラズマ状態(陽イオンと電子)とただの気体の状態(基底状態)の間には, エネルギーが高い気体の状態(励起状態)があり, 放出される光の色(波長, エネルギー)は励起状態と基底状態のエネルギーの差によって決まります.

もっと正確に言えば, 基底状態の水銀蒸気に電子がぶつかる → 陽イオン → 励起状態 → 基底状態 というよりは,

基底状態の水銀蒸気に電子がぶつかった時点で陽イオンと励起された気体分子両方ができ, 混在した状態になります. さらに詳しいところはご自身で.

図 色んな速さの電子+陽イオン → 励起状態 → 基底状態

陽イオンと電子が再結合することで生じる光は広い波長幅を持つ可視光ですが, 励起状態と基底状態のエネルギー差によって生じる光は可視光より大きなエネルギーを持つ紫外線です. そのままでは人間の目に見えないので, 可視光に変換しなければなりません. 蛍光灯の側面には紫外線を可視光に変える蛍光物質が塗布されており, 最終的にはこの蛍光物質を経由して目に見える白い光となります.

LED:電子正孔対消滅

LED とは Light Emitting Diode(発光ダイオード)の略で, 日本では EL(Electro Luminescence)の名称でも知られます.

電気エネルギーを光に変換する点は上記の白熱灯や蛍光灯と同じです.

LEDを知るためにはダイオードとは何なのか, をまず知らねばなりませんが, ダイオードとは何なのか知るためには半導体について知らねばなりません. すべてを詳細に説明するのは大変なので分かったつもりになれる説明を試みます.

純粋な半導体は金属導体に比べて内部の電子密度が低く, 抵抗率は10桁ほど大きい値を示します. 導体の中で電荷を運ぶのは「電子」であり, 半導体の中で電荷を運ぶのも「電子」なのですが半導体の中には電荷を輸送する粒子(キャリア)がもう1つあり, これを「正孔(ホール)」と呼びます.

正孔は正(+)の電荷を持つキャリアです. 半導体中に満たされた電子を「水」とするなら, 正孔は水中の「泡」に例えられます. 水は重力の向きに従って下向きに移動しますが, 泡は重力と逆向きに上へ動きます. 電子と正孔は互いに逆向きに動きますが, 電子(-)と正孔(+)は逆の電荷を持っているので, 電子が下向きに動くことと, 正孔が上向きに動くことは電気的には等価です.

半導体中の組成を変化させ, 内部に正孔がたくさん存在するようにした半導体を「p型半導体」と呼び, 電子がたくさん存在するようにした半導体を「n型半導体」と呼びます.

このp型半導体とn型半導体をくっつけて電極で挟むとダイオードができ, ダイオードは「一方向のみに電流を流す」という性質(整流性)を持っています. 下図はダイオードの仕組みを簡単に図解したものです.

図 ダイオードの仕組み

電子と正孔が出会うと対消滅します. このとき, 電子と正孔がそれぞれ持っていたエネルギーが放出されるのですが, このエネルギーが熱になって逃げないように材料を工夫すると, 理論的には放出されるエネルギーの100%を光に変換することができます.

対消滅で生じるエネルギーは100% ですが, 光が再び半導体に吸われたり, 散乱したり, そもそも電子と正孔が出会わなかったりするので, 外部に取り出される光は100% とはなりません.

これまでの光源と大きく異なるのは「熱くならない」ことであり, 白熱灯のように熱によって劣化することもありません.

材料はすべて固体なので, 蛍光灯のように割れて危険な物質が飛び散ることもありません.

まとめ

光源の歴史と発光原理についてでした.

原理について詳しく知ろうとすると, 放電, プラズマ, 励起状態, 半導体, 黒体放射など高校レベルをちょっと超えた難しい物理に出会うので, 学んでみるともう少し楽しくなれるかもです.

大学で黒体放射について学んだときは「これが何の役に立つねん」と思ったものですが, 大学の教員は「何の役に立つのか」を説明しません. 大学教員はそもそも教育者ではなく説明下手なのは仕様のないことなので, そこは期待せずに, 自分で考えるべきでした. そういう意味では, 「自分で考える機会を与えてくれている」と言えなくもないですね.

「知りたい」という欲求や, 必要に迫られないと有益な勉強をしないのだなと痛感します. 何事も受け身は良くないということで, ここはひとつ.

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