有機合成研究の狂気 : キムワイプ卓球

科学者が作り出した狂気のスポーツ「キムワイプ卓球」.

キムワイプ卓球は成立から長い年月が経った今でも根強い人気を誇り, 裏オリンピック2020では正式競技として採択されました.

今回は Scientific Sport として各方面から注目を集めるキムワイプ卓球の概要について解説し, 「キムワイプ卓球は有機合成研究室で生まれた」という筆者の持論を, 根拠と共に提示します.

有機合成研究について

筆者の経験から

筆者の大学時代の専門は半導体や電磁気なのですが, 3か月ほど有機合成の研究室にお邪魔して一緒に遊ばせて頂いたことがありました. 以下, そのときの思い出を元に主観で語っていきます.

主な研究内容

一言で「有機合成研究」といっても内容は様々. 一括りにすべきではないですが, 大雑把に言えば有機合成化学というのは「有機化合物の新規合成法」もしくは「新規化合物の創出」を研究対象にするものです.

研究内容に起因した研究構造の実態

有機合成は, 合成計画立案 → 合成 → 分析 → 計画の改善 というサイクルを回していきます.

合成計画の立案と計画の改善には知識, 経験, 閃きが求められますので, 立ち止まってじっと考えることは必要です.

それと同時に, 思いがけずに良き有機物が合成されることもありますので, ずっと立ち止まっているよりは手を動かしながら考えることが大切になります.

計画云々の理屈のところはやりながら学んでいくものですし, 研究室に配属されたばかりの学部生に合成計画を考えろというのも無理な話. 結果として, 最初のうちはひたすら手を動かすことになります.

この辺はどの研究分野でも近いところはあるでしょう. まずは最低限必要なテクニックを習得するものです.

加えて, 有機合成研究分野の大学の研究室ではコアタイムが決まっているところが多い印象を受けました.

手を動かさないと結果がでないという都合上 (計算機科学と違うところ), 成果を上げるには毎日の積み重ねが大事ということでしょう.

毎日同じ作業をしていると実験技術が向上していき, 次第に何も考えずに作業を行えるようになりますが, そこが有機合成研究の恐ろしいところ. 実験が上手くいかず, 修論発表までもう日がない, 材料を合成するのに掛かる時間を考えて. . . 終わらねぇ. . . と何も考えていないと, そうなります.

そのとき人は狂気に落ちるわけです.

とある化学のキムワイプ

有機合成の研究に欠かせないのが, キムワイプです.

図 キムワイプ(https://pro.crecia.co.jp/index.html)

キムワイプ初心者のために, これが何かという説明をすると, 「ホコリが付かないティッシュ」です.

有機合成に使うピペットやビーカー, カラムといった実験器具内部にはホコリが付着することが好ましくありません. なぜならホコリが合成中の溶液中に混入し, 反応を阻害したり, 予期しない反応を起こすこともあり得るからです. 通常用いられるティッシュは繊維が脆く, 使用に伴って多くのホコリが発生します. この点を改善したのがキムワイプです.

もちろん実験は大気中で行いますので, 多少ホコリが混入することは致し方ありません. 可能な限り大気中のホコリを減らし, ホコリの混入を防ごう, ということでしょう.

キムワイプを使うのは有機合成研究だけではありません. ホコリの付着が好ましくないすべての分野に用いられます.

また, 用途としては器具に付着した液滴を拭き取るだけでなく, 机の上を拭いたり, 鼻をかんだりするのに使います.

キムワイプキャンペーン

キムワイプはすべての有機合成化学者に愛用されておりまして, 販売元の日本製紙クレシアではちょくちょくキャンペーンをやってます.

図 キムワイプキャンペーン (https://pro.crecia.co.jp/blog/category/campaign)

以前はキムワイプ1年分プレゼントとかもやっていたような. キムワイプ好きにはたまりません.

キムワイプはおいしい

様々な用途に使われるキムワイプなのですが, なんとその用途は, 化学の域に留まりません.

キムワイプには科学研究を補助する栄養価があることが知られており, 食用としても使用できます.

有識者によると, ほんのり甘く, 口に含むと多幸感に包まれるとのことです. 疲労減退, 一時的な覚醒作用がありますが, 軽度の中毒性があるので十分注意して, 自己責任で摂取するようにしてください.

図 キムワイプはおいしい キムワイプbot(@KimWipe_bot1)

卍 キムワイプ卓球 卍

本題のキムワイプ卓球に話を移します.

キムワイプ卓球 (英 : KimWipes table tennis)は球技の一種です. 競技者は卓球台 (実験用の机でも可)を挟んで向かい合い, セルロイド製, もしくはプラスチック製のボールをキムワイプの箱で打ち合って得点を競います.

歴史

キムワイプ卓球の起源について詳細は現在も分かっておらず, 研究が進められています.

諸説提示されていますが, 筆者は「有機合成研究室学生による突発的発生である」という説が真実に近いのではないかと感じています. キムワイプの使用頻度が高いということ以外に, 有機合成研究特有の発生原因が考えられるためです. その原因とは以下の3点です.

  1. 日常的に気化した有機溶媒を吸引している.
  2. 一般的労働基準から逸脱した研究環境.
  3. ChemDraw 等の分子構造作成ソフトでちまちました作業に晒されることの反動.
  1. について, 有機合成研究室に所属する教授 (ないし教員)にとって, ChemDraw は唯一の癒しツールです. 大学に所属するという意味では, 学生と立場は同じであっても, 教授はChemDrawによってストレスを蓄積しません. よって, 教授がキムワイプ卓球を考案したわけではないことが示唆されます.

競技ルール

競技ルールは特にありませんが, おおよそ卓球に準拠します. スポーツマンシップと研究モラルに則り, 周囲の迷惑等を考えて楽しく遊びましょう. 捏造や盗用は厳禁です.

打球に際し, 腕を振り回すだけではうまく返球することはできません. 肘から先は固定し, 体ごとキムワイプを振ることで上手く返球できます.

ピンチの時は, 心の中で3回唱えろ! ヒーロー見参! ヒーロー見参! ヒーロー見参! そうすりゃオイラがやってくる.

支援団体

KTTA (国際キムワイプ卓球協会)という団体が査読付きジャーナルを発行しているらしいです.

また, Twitter で「キムワイプ卓球」という単語を呟くと, 協会関係者にフォローされることがあります. ちょっとしたホラーですが, ホラー好きの方は試してみてください.

まとめ

キムワイプ卓球がどのようなものか, 伝わったでしょうか. 何度も同じことを述べてしまい大変恐縮ですが, 大事なことは「キムワイプ卓球の外側」ではなく, その「精神」です.

「自分の置かれた立場, 環境を駆使して今を楽しむ」という精神をもって生み出されたのが「キムワイプ卓球」であり, その精神は国や時代を超えて受け継がれています. どのような立場に置かれても「今を楽しむ心」を決して忘れるべきではない. キムワイプ卓球はそういう大事なことを教えてくれます.

興味の湧いた方は実際にキムワイプを購入し, キムワイプ卓球に講じてみてください.

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