塾講師アルバイトを始めるとき知っておくべき4つの事実
人生で初めてのアルバイトには, 無知な大学生を狙った「分からん殺し」が多数存在します.
アルバイト先の人間関係や得られるスキルに重きを置くならば, 金銭面で多少損をしても問題はないかもしれません. しかし, 労働者の無知に付け込み, 不正に労働力を得ようとする企業が横行すれば, 国内産業の質の低下に繋がり, それは日本全体の損失となります.
自身の損得のためだけでなく, 公正な市場を守るためにも, 初めてアルバイトをする方には, 知っておいて欲しいことがあります.
筆者は塾講師アルバイト以外をやったことがないので, 塾講師アルバイトを例にお話ししていきますが, 今からする話はバイト全般, ひいては雇用契約全般に通用する話です. 知らないことが無いかどうか, まずは目次でも眺めていって下さい.
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扶養控除申告
4つのうち1つ目は, 税金の話です. 所得税のことぐらいは大学生でも知っておいていいと思うのですが, 筆者が大学生のとき, 税金については全く理解せずに生活していました.
労働者が税金についての知恵を付けると徴収される税金の額が少なくなるため, 日本政府にとって損です. 故に彼らはわざわざ税金の説明を致しません.
大学生の場合, バイトの面接に受かると, たいてい「扶養控除申告書を書いてください」と言われ, 何も分からないまま書きます. これは一体何なのか ?
扶養控除申告を理解するために, 所得税 → 扶養 → 扶養控除申告 の順で解説します.
所得税とは個人の所得に対して掛けられる税金です. 大学生の皆様におきましてはご両親が当人分の所得税を払われていることでしょう. これは学生が家族の扶養下にあるからです.
扶養とは「自身での労働が困難である場合に, 他者が生活を援助すること」つまり「養ってもらうこと」です.
大学生は勉強で忙しくて, 自分でお金を稼ぐことができないので, 養ってもらっている状態です. しかし, 自分でお金を稼いでいるならば話は別です. 国も「自分で稼げるなら税金払え」と言ってきます.
そこで「いやまだそんなに稼いでないんで, 税金取るのは勘弁してください」と願い出るのが扶養控除申告です.
扶養控除申告をしないと, 両親とバイト先双方から2重で税金が徴収されることとなり, バイト先に迷惑が掛かるので, ちゃんと書きましょう.
扶養控除申告書は怪しいものではなく, 書いて損はありません. コワクナイ. コワクナイヨ.
控除って何?とか, 扶養控除についての詳しい仕組みとかは [1] などで調べてみてください(ページの最後にリンクがあります).
無賃金のミーティングは任意参加
アルバイト先の人間関係は大切ですし, バイト始めたての頃は(いい意味でも悪い意味でも)ミーティングで学ぶことが多いのでちゃんと参加しましょう. しかし, それが合法かどうかはまた別のお話です.
労働基準法24条 [2] によると, 労働に対しては必ず賃金が支払われなければならず, 売上に繋がる強制力のある業務は「労働」と解釈されます [3]. 当然ミーティングも「労働」に含まれます.
しかし, 現実にはアルバイトのミーティングに対して給料が支払われていないケースは多数存在します. 企業側からすると「これは任意のミーティングで, 全員が参加したくて参加している」という「体」なのです.
つまり, 給料の発生しないミーティングは任意なのです. 参加したければ参加すればいいし, したくなければする必要はない, ということになります. 企業が参加を強制することはできません.
休憩時間やバイト前の待機時間も同じです. 塾講師アルバイトであれば「授業20分前に教室に到着し, 準備してください」と言われますが, この時間に対して給料が発生していないならば, これに従う必要はありません. 仮に契約書にそのように記載されていても, 労働基準法に違反する契約なので, 契約自体が失効します.
とは言え, 「違法だ!」と面と向かって叫んでも「じゃあ辞めて」とか「訴えれば?」と言われるのがオチです. 「労基違反の企業を訴えてみた」という動画を YouTube に投稿するなら元が取れるかもしれませんが, 時間もお金も無駄にするので, もっと上手く立ち回る方が賢明でしょう.
具体的には, 「その時間は忙しくて. . .」と嘘を織り交ぜて濁しつつ永遠に逃げる, という方法があります. また, アルバイト全員で法に対するリテラシーを高め, 「ミーティングは参加しなくていい!」という民意を形成することも重要です.
断っておくと, 本件でバイト先と揉めても責任は負いかねます.
講師に対する認識の歪み
「講師はアルバイトだよ」と言うと, 生徒に驚かれた経験が幾度かあります. 集団指導や個人経営の塾は別ですが, 個別指導の塾では講師がアルバイトであることが一般的です.
しかし, 生徒と生徒の親御さんは「講師がアルバイトである」という事実を知らないことが多々あります.
何度も生徒に驚かれて気付いたのですが, これは塾側が意図して言っていないのです. 塾への入会時にこの点を説明しないことについて, 読者の皆様はどのようにお考えでしょう. 詐欺とまでは言わないでしょうが, 説明責任を果たしていると言えるでしょうか.
説明をしないのは, その方が学習塾への入会者が増え, 売上が伸びるからです. 「プロが教えている」という言葉によるミスリーディングですね. 「プロ」は中々便利な言葉です.
生徒・親御さんと講師の間にある認識の歪みは, 講師に対する「過度な期待」という形で顕現します. 「先生ならば, もっと発言に責任を持つべき」「先生がスケジュール調整を間違えた」などと講師に矛先が向くことがありますが, その矛の先にあるものは幻想なので, 色々な場所で混乱を招きます.
トラブル全般に通じる話ですが, トラブルが発生する原因の1つは認識のズレです. 問題が起きそうになったら「アルバイトである」という立場の表明をはっきり行いましょう.
「休むときは代わりを探せ」は違法
アルバイトをやっていると, 「個人の事由で休むときには, 代わりの人を自分で見つけてこなければならない(強制)」というルールを提示されることがあります.
結論から言うと, これは違法です. ただし, 「代わりの人を見つけてきて下さい(お願い)」だったら違法にならないかもしれません. 微妙なとこなので順を追って説明します.
決められた時間のアルバイトを休むということは, アルバイト側が債務不履行責任を負います. 決められたことをやらなかったのだから, その分の罰則が課せられるということです.
欠勤の連絡があまりに直前で業務に支障が出た場合(授業を受けに来た生徒に対して講師が不在で保護者から苦情が来た, など)は損害賠償義務まで発生するかもしれません.
しかし, これに対して「代わりを探してこい」という業務命令でそれを償わせることは, 業務命令権の濫用となります [4].
それとこれとは話が別, ということですね. バイト欠勤分はちゃんと償わなければなりませんが, それは減給などによって履行されるものであって, 業務命令で行われるものではないということです.
この問題には別の考え方も存在します. 「代わりを探してきてください」という『お願い』は, バイト先の示談交渉なのだ, という意見です [5].
通常, 法的に問題があれば民事裁判で決着を付けるわけですが, バイトの欠勤という下らない事案を一々法廷に持っていくことはまずありません. その場で示談交渉をします.
企業側は「代わりに入れるヤツを探す, ちゅうことで手ぇ打とうやないか」と交渉をしてきているわけです. バイト側はその交渉を受けるか, 受けないか選択する自由がありますし, それに従わない場合は, 企業側が然るべき処置を取ることができます.
何にせよ, ミスや欠勤を償うために行動を強制されることはないのです.
バイトの欠勤については色々な意見があるようですが, 筆者は「バイトを休まないでちゃんと働くことはアタリマエ」みたいな考え方に賛同できません. アルバイトは休みたいときにいつでも休んでよい, からこそ「アルバイト」なのだと考えます.
休む自由は誰にでも平等に与えられますが, 自由には当然責任が伴います. アルバイトを休むことによって, 他人に迷惑がかかるならば, それは償わなければなりません. 休むという行為はそれによる不利益とセットなのです.
企業側はモラルや慣習, 伝統などのルールでアルバイトを縛るのではなく, 法に従った然るべき処置を取るべきでしょう. 平たく言えば, 首を切ればよいのです. 企業の都合でそれができないからといって, 「アタリマエ」を持ち出して同調させるから日本は自殺者が多いのでしょう.
まとめ
これからアルバイトを始める人に少しでも得になるように, また, 社会の公正さが保たれるように記事を作ったつもりなのですが, 雇用側と対立すると損をすることも増えるでしょう. その点重々注意してください.
最後に参考にさせて頂いた記事を以下に記します.
[1] 扶養控除とは?わかりやすく解説。養う家族がいれば税金が安くなる?申請は? | 税金・社会保障教育
[2] 労働基準法第24条とは|賃金支払い5原則をわかりやすく解説|労働問題弁護士ナビ
[3] バイト先の「深夜ミーティング」交通費も給料も出ず参加強制…どんな法的問題がある? – 弁護士ドットコム
[4] 「休むなら代わりの人を見つけてよ」 バイト先のこんな命令に従う必要はあるの? – 弁護士ドットコム
[5] バイトを休む時には代わりを探す?